2012年12月28日金曜日

劇団だるま座『櫻の園』




木曜の夜。
荻窪のアトリエだるま座にて。


チェーホフの謎。

いや、謎なんか本当はないのかもしれない。
「謎」なんていったら、笑われるかもしれない。
でも、ぼくにはやっぱりわからない。

戯曲『櫻の園』を読んで、その面白みがどこにあるのか。

だるま座の『櫻の園』を観れば、その面白さを教えてくれるのかもしれない。
そう期待して観に行きました。

そして細部について、ある程度は理解したような気がする。

たとえば、エピホードフが花束を持って出てきて、落としてしまう場面。
すぐに拾って、ドュニャーシャに事務的な台詞を言って渡す。

どう理解すればいいのかわからなかったけれども、場面で再現されれば理解できた。

エピホードフは花束をドュニャーシャにささげたかった。
しかし、ロパーヒンがいたので、渡すことができず、ショックで落とし、誤魔化すために事務的な台詞を口にする。
だるま座の上演では、さらにわかりやすく、エピホードフが間違ってロパーヒンに花束をささげようとしてしまうことになっている。眼を開けて、間違いに気づいたエピホードフが花束を落とす。
そういうことだったんですね。

このように、上演されることでわかったことがたくさんあったように思います。

残念だなあと思ったのは、シャルロッタの手品の場面。
原作では、アーニャ、ワーリャが布の後ろから登場する手品が見られるのですが、だるま座上演ではそれがなかったこと。
いや、ごめんなさい。細かいことですが。


それからなかなか大きな謎。
ロパーヒンは、ワーリャにどうしてプロボーズができないのか。
だるま座上演では、プロボーズしたいんだけど、女性相手には臆病で、なかなか言い出せない、という感じでした。
商売やビジネスには長けているけれども、恋愛に関しては、まったくだめ、という理解でいいのかしら。

『櫻の園』最大の謎は、競売で櫻の園を競り落としたロパーヒンとラネーフスカヤの関係。

ラネーフスカヤが泣くのは、ロパーヒンが競り落としたからではないのだろう。
競売があっても、なにか奇跡的なことが起こって、櫻の園はきっとそのままになるはずと思っていたのに、そうはならなかったから泣くのではないか。
そう考えていた。
でも、それがしっくり来るかといえばそんなこともない。
ではどう考えればいいのだろう。
その答えは、だるま座の上演を観ても、よくはわからなかった。

ロパーヒンはラネーフスカヤを慕っているのに、櫻の園を買い取って、ラネーフスカヤを追い出すことがどうしてできるの?
そのへんも曖昧なままだったような気がする。



現代の日本で、チェーホフの戯曲を(ほぼ)そのまま上演する意味ってなんだろう。

遠い時代のロシアの没落貴族の話は、なんだかやっぱりピンと来なかった。


いや、でも、戯曲と上演は別物です。
上演自体は、独特の雰囲気があり、大変面白かったです。
ありがとうございました。



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